#50 世界中の誰よりも [タッチ]
「上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも」
by,上杉達也(タッチ)
「南のよびだしベルがタッちゃんに通じているんだ。きっと…」
(南)
この日、上杉達也は甲子園の開会式の日であった。
浅倉南は新体操の大会の日であった。
そんなふたりは街で偶然に会い、河原に向かった。
「いつもそうだったもの。南がくじけそうなとき、タイミングよく現れて、南のエネルギーになってくれた」
(南)
「和也とちがってヒマだったからな」
(達也)
「今日はヒマじゃないでしょ」
(南)
「南を心配してきたわけじゃねえよ。このままじゃ試合にならねえんだよ。孝太郎のバカが、しょっぱなから、とんでもねえ相手をひいてくれるし。なによりも頼りのエースが、どこをむいて歩いているのかわからねえ状態じゃ…とてもじゃねえけど…試合にはならねえんだよ。スタート地点の確認だよ。上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも。ここから始めなきゃ、やっぱりどこにも動けねえみたいだ」
by,上杉達也
タカセ
#37 やさしく [タッチ]
「だまって、やさしくキスするんじゃないか……」
by,上杉達也
上杉達也は、ボクシング部である。
弟の和也が野球部で、達也は友人の原田に強制的にボクシングをやらされた。
その中、達也はボクシングで初めての練習試合。
和也は高校で初めての公式戦。
そのふたつが同じ日に行われる。
ふたりの幼なじみ南は、野球部のマネージャーとして、和也の公式戦に行くことになる。
「約束して、かならず勝つって」
(南)
「和也じゃあるまいし、そんな約束できるかよ」
(達也)
「げんまん」(南)
達也に有無を言わさず、約束をした。
試合当日。
もちろん、和也は公式戦で勝利。
達也は負けた。
「惜しかったわね………さっき原田くんから電話があったわ………タッちゃんは精いっぱい戦ったって……一生懸命勝とうとしていたって……だからほめてやれって………」
(南)
部屋にこもり、横になる達也に南は話しかけた。
ほめてもらう行為が、達也にはみじめに感じた。
どうでもいい練習試合だったが、南に「かならず勝って」と言われ、意味のある試合になってしまった。
「ゴメンね…」
(南)
「バカやろォ!あやまられたら、なおさらみじめになるだろうが!」
(達也)
「じゃ、どうすればいいのよ?」
(南)
「そうだな…こんなとき、やさしい女の子なら………だまって、やさしくキスするんじゃないか……」
by,上杉達也
そして、南は優しく達也に口づけをする。
それが、ふたりのファーストキスであった。
タカセ
#30 ウソみたいだろ [タッチ]
「ウソみたいだろ」
by,上杉達也(タッチ)
「マンガ=アニメ」みたいなとこがある。
なにせ、原作がマンガだから、当たり前のことだ。
今回はアニメでも「名シーン」と言われる、“そこんとこ”を紹介したい。
甲子園を懸けた夏の地区予選の決勝戦。
上杉和也はエースとして、マウンドに上がる予定であった。
しかし、マウンドにはその姿がなかった。
和也と達也は決勝戦が行われる朝に、珍しくキャッチボールをする。
小学生以来というキャッチボールをしたあとに、和也は学校に向かう。
達也はお守りを和也に届けるために、学校を訪れるが和也の姿はなく、街を探し回る。
浅倉南や和也の両親、野球部の部員などは和也がいないことを心配する。
結局、和也が不在のまま、試合は始まってしまった。
そのころ、達也は病院にいた。
テレビで試合の様子を見ていたが、医者に「お気の毒ですが…」と言われ、達也は両親などがいる球場に向かい、両親と友人の原田に病院に行くように言った。
南は病院へと向かい、和也が寝ている部屋を訪れた。
そこには、達也も座っていた。
「きれいな顔してるだろう。ウソみたいだろ。
死んでるんだぜ。それで…。
たいしたキズもないのに、ただ、打ちどころが悪かっただけで…
もう動かないんだぜ。な。ウソみたいだろ」
by,上杉達也
学校に行く前の会話は
「じゃ兄貴、いってくるね。はげましのおことばは?」
(和也)
「がんばれよ」
(達也)
「うん」
(和也)
「じゃあ南、球場で」
(和也)
「うん」
(南)
タカセ
#6 クセになる [タッチ]
「敬遠は一度覚えるとクセになりそうで」
by,上杉達也(タッチ)
物事から逃げるのはかんたんなことだ。
かんたんだからこそ、クセになってしまう。
それが一番怖い。
上杉達也は、甲子園を懸けた大事な一戦を戦っていた。
上杉のいる明青学園は、天才打者新田明男がいる須見工と戦っていた。
上杉は、新田に対して真っ向から勝負をする。
8回裏、3対3の状況で攻撃は須見工。
上杉は、新田を迎える前まで8者連続三振をやってのけていた。
新田に対して「敬遠」の雰囲気が周りを包み込んだが、上杉の決断は「真っ向勝負」。
新田に本塁打を浴び、試合の終わり間際に逆転の本塁打を許してしまう。
ベンチに戻って上杉は、監督に「なぜ新田と勝負をした?」と言われ、
「野球だから。それに、敬遠は一度覚えるとクセになりそうで」
by,上杉達也
と返した。その顔に一切の悔いはなかった。
逃げ出さないで勝負をすることは潔い。
どんな結果であろうと、受け止めることが大事なのだ。
タカセ