#37 やさしく [タッチ]
「だまって、やさしくキスするんじゃないか……」
by,上杉達也
上杉達也は、ボクシング部である。
弟の和也が野球部で、達也は友人の原田に強制的にボクシングをやらされた。
その中、達也はボクシングで初めての練習試合。
和也は高校で初めての公式戦。
そのふたつが同じ日に行われる。
ふたりの幼なじみ南は、野球部のマネージャーとして、和也の公式戦に行くことになる。
「約束して、かならず勝つって」
(南)
「和也じゃあるまいし、そんな約束できるかよ」
(達也)
「げんまん」(南)
達也に有無を言わさず、約束をした。
試合当日。
もちろん、和也は公式戦で勝利。
達也は負けた。
「惜しかったわね………さっき原田くんから電話があったわ………タッちゃんは精いっぱい戦ったって……一生懸命勝とうとしていたって……だからほめてやれって………」
(南)
部屋にこもり、横になる達也に南は話しかけた。
ほめてもらう行為が、達也にはみじめに感じた。
どうでもいい練習試合だったが、南に「かならず勝って」と言われ、意味のある試合になってしまった。
「ゴメンね…」
(南)
「バカやろォ!あやまられたら、なおさらみじめになるだろうが!」
(達也)
「じゃ、どうすればいいのよ?」
(南)
「そうだな…こんなとき、やさしい女の子なら………だまって、やさしくキスするんじゃないか……」
by,上杉達也
そして、南は優しく達也に口づけをする。
それが、ふたりのファーストキスであった。
タカセ
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