#31 濃さで勝負!! [リアル]
「命が短いなら濃さで勝負!!」
by,山内仁史(リアル)
現実を受け止めた上で、彼は決断した。
残りの時間をどう過ごすのかを……。
戸川清春と山内仁史の出会いは、病院であった。
この出会いこそ、戸川の運命を変えるものであった。
山内、通称「ヤマ」は、戸川のことを知っていた。
ヤマは陸上マニアであり、中学陸上の歴代優勝者の名前を全て言える。
それに、ヤマ自身、陸上の名門校「花沢中学」の陸上部に在籍していた。
ヤマは5歳のときに発病し、転びやすく、次に階段が辛くなる。
ついに、歩くのも困難になってきたころ、走ることに興味がわく。
「自分が、あんな風に走れる日はもう絶対に来ないっていうことは辛いけど、だけどその辛さを、あんな風に走れたらなあっていうあこがれみたいな気持ちが、少しだけ上回って…」
(ヤマ)
そして、名門校の陸上部のマネージャーを務めるようになる。
戸川に歴代優勝者を言うと、優勝していない戸川の名前を言った。
戸川はゴール手前で、止った。
誰よりも速く走っていながら、止ってしまい、脚を切断しなければならないことになる。
「おぼえてないいんだ。僕も誰が勝ったのか。おぼえてるのは…あの年君が誰よりも速かったってこと。ちょうどその頃かな。いよいよもう歩けなくなって、車イスを使うしかなくなった。そして、あと何年かで、この車イスにも乗れなくなる」
(ヤマ)
ヤマは、戸川とお好み焼きを食べながら平然と語った。そして続けて……
「20歳くらいで僕は死ぬ」
(ヤマ)
戸川にはわからなかった。
なぜ、ヤマはここまで平然としていられるのかを。
「恐くないのか」と戸川は問いた。
「戸川君。ジェットコースターに乗ったことある?
あれって実際、乗ってる時間はほんの何分かでしょ?
だからってあれに乗ってる最中に、あと何秒しかない、あと何秒で終わっちゃうって、そんなことばかりを考えてたら、何のために乗ったかわかんないよね。
何のために生まれてきたかわかんないじゃん。
そんなヒマないよ。命が短いなら濃さで勝負!!」
by,山内仁史
戸川はヤマとの出会いで変わった。
車イスバスケに出会い、たくさんの希望を持つようになる。
戸川にとってヤマは「ヒーロー」なのだ。
彼の決断は、常に前を向くことである。
残りを悔いなく過ごすために、前を向く。
タカセ
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